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『初心者必見!米国債券投資の教科書|株式投資の次に備える資産防衛術』

2月26日マーケット

第1章 米国債券投資に注目する背景

はじめに:コロナショック以降の株式市場は歴史的な回復と上昇を見せ、新たに投資を始めた初心者の方々にとっては「株式さえ持っていれば資産が増える」時期が続きました。しかし、実はその裏で市場環境やプロの投資行動に大きな変化が生じています。2024年末頃からは米国債券への注目が急速に高まっているのです。本章では、そんな米国債券投資に注目すべき現状の背景について、初心者にもわかりやすく解説します。株式市場の不安要因から著名投資家の動向、そして債券の魅力まで、順を追って見ていきましょう。

1. 2024年末の株式市場混乱:トランプ関税再燃と地政学リスク

2024年も後半に差し掛かった頃、株式市場には不安要因が相次ぎました。特に大統領選挙に絡んで**“トランプ関税”再燃への懸念が高まったこと、そしてウクライナ戦争や中東紛争の長期化・拡大など地政学リスク**が重なったことが、市場のボラティリティ(変動)を押し上げたのです。

  • 米大統領選でトランプ氏が再び台頭するにつれ、「米国第一主義」に基づく強硬な通商政策復活への警戒感が強まりました。実際、米連邦準備理事会(FRB)の統計によれば、貿易政策の不確実性指数(TPU指数)は2024年11月に急上昇し、トランプ氏が初当選した2017年時を上回る異例の水準に達しています。これは市場が関税引き上げによる米中貿易戦争の再燃を強く意識したことを示しています。
  • あわせて、世界各地の政治リスクも高止まりしました。例えば2024年にはウクライナや中東で戦火が続き、シリアのアサド政権崩壊といった出来事もあり、依然として不安定な状況が続きました。さらに中国との摩擦(輸出規制やハイテク分野の対立など)も相まって、グローバルな経済見通しに不透明感が漂いました。

こうした要因から、2024年末の株式市場は一時的に混乱し、投資家心理も揺さぶられました。株価自体は大統領選直後に上昇する場面もあったものの、これは「減税や規制緩和への期待」という特殊要因によるものでした。その後は利下げ期待の後退景気減速懸念も重なり、「これまで順風満帆だった米国株も今後は伸び悩むのではないか?」という慎重な見方が広がりつつあります。

補足: 実際、専門機関PGIMのレポートによれば、2025年前半に向けても地政学リスクの不安定さは続くとの指摘があります。つまり、初心者の皆さんにとっても「株一辺倒」の投資戦略が通用しない局面が今後訪れる可能性があるのです。

2. 「バフェットが債券投資家になった」その真相

株式投資の神様とも称されるウォーレン・バフェット氏ですら、昨今の環境下で債券に注目する動きを見せています。その変化ぶりを示すエピソードとして有名なのが「バフェットが毎週100億ドル規模で米国債を買っている」というものです。

  • バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイは、2023年8月の時点で「先週も今週も100億ドル(約1.3兆円)の米国債を買った。来週も3カ月物か6カ月物のどちらかを100億ドル買う予定だ」と発言しています。短期の米国債(いわゆるTビル)を毎週1.3兆円ペースで買い増しているという衝撃的な内容で、市場でも話題となりました。
  • 実際、バークシャーのポートフォリオ構成にも変化が現れています。2024年前半だけでTビル(短期米国債)の保有額を81%増加させ、6月時点で約2,340億ドル(約35兆円)に達したと報じられています。これはバークシャーの全資産のうち約半分近くを占める規模であり、驚異的な「債券シフト」です。
  • 他方で、バークシャーはこの2年ほど一貫して株式を純売却しています。具体的には、過去7四半期連続で売り越し(買いより売りが多い状態)が続いており、2023年には主力のアップル株を約750億ドルも売却しました。その得た資金の行き先こそが米国債であり、結果として「バフェットは事実上、巨額の債券投資家になった」と言われるゆえんです。

こうしたバフェット氏の動きは、「株式の時代」から「債券(安全資産)の時代」への転換を象徴するものとして注目されています。長年株式一筋だった投資家が債券に乗り換える背景には、現在の債券利回りの魅力株式バリュエーションへの警戒があると考えられます(次項で詳しく解説します)。

3. 株と債券の“リターン逆転”:データが示す異変

かつて「株式は長期的に見れば債券よりリターンが高い」と言われてきました。しかし2024年の市場では、その常識に変化が生じています。なんと、米国株式(S&P500)と米国債券の期待リターンが逆転しつつあるとのデータが相次いで報告されているのです。

2024年末時点で世界債券指数の利回り(右端4.5%超)は2008年以来の高水準を記録しました。このように債券利回りが急上昇した結果、株式との利回り格差(リスクプレミアム)は一時マイナスに転じています。

  • 米国株のバリュエーション(評価)は歴史的にも割高な水準にあり、S&P500指数の予想益利回り(利益/株価)は2024年末時点で約4%台と推定されています。一方、米国債(投資適格債券)の利回りは同時点で4.5%超に達し、約15年ぶりの高水準となりました。その結果、両者の差(株式益利回り-債券利回り)は -0.43%(マイナス0.43ポイント) と逆転現象が起きています。平たく言えば「安全な債券のほうが株式より利回りが高い」状況であり、専門家たちはこれを“株式のリスクプレミアム消失”と表現しています。
  • 実際、大手運用会社PIMCOは「株式と債券の利回り格差がマイナスに転じた背景には、債券利回りが数年ぶりの高さに達したことがある」と指摘し、投資家に分散投資(株式偏重の是正)を促しています。株式市場が将来も順風満帆である保証はなく、足元のように株価が割高で不確実性が高い局面では、債券で安定的に4~5%の利回りを得る方が有利と考える向きが出てきているのです。
  • また長期のリターン予測でも、債券優位の見通しが現れています。モーニングスターの調査によれば、一部の運用会社は今後10年の米国株期待リターンより米国債券の方が高くなると予測しています。これまで「長期では株式が勝つ」という前提が揺らぎ始めており、専門家の間でも「今後しばらくは債券の方が魅力的かもしれない」という声が増えてきました。

このようにデータや専門家の分析が示すのは、現在の債券利回りの高さと株式の割高感です。初心者の方にとって重要なのは、「今の株式市場にはそれなりの下落リスクがあり、一方で債券には魅力的な利回りがある」という事実でしょう。次章以降では、具体的に債券投資をする方法や商品について解説していきますが、ここでは代表的な商品例を2つ挙げてみます。

4. 債券投資の具体例:米国債ETF(TLT)と先進国債券インデックス

債券投資と一口に言っても、実際に個人が買える商品はいくつか種類があります。ここでは米国の長期国債に投資する代表的ETF「TLT」と、日本の投資信託で人気の「eMAXIS Slim先進国債券インデックス」を例に、その基礎データやパフォーマンスを見てみましょう。

  • **TLT(iシェアーズ米国20年超国債ETF)**は、米国の超長期国債(満期20年以上)にまとめて投資できるETFです。運用残高は約478億ドル(約6.5兆円)にも達し、世界最大の債券ETFの一つとなっています。信託報酬(経費率)は年0.15%程度と低コストで、NYSEに上場しているため株式と同様にリアルタイムで売買可能です。
    • 利回りと金利感応度:TLTの直近の分配利回り(SEC利回り)は約4.5~4.6%程度とされています。これは米国長期金利の上昇を受けてかなり高い水準です。一方、デュレーション(価格感応度)は約16年超と長いため、金利変動による価格変動も大きい点に注意が必要です。実際の値動きを見ると、2022年に長期金利急騰でTLT価格は▲30%以上の大幅下落となり、2023年は+3%程度反発、しかし2024年も再度▲8%の下落となりました。このように価格変動はありますが、その分**「将来金利が下がれば大きな値上がり益が期待できる」**という特徴も持っています。
    • 初心者へのポイント:TLTは米国債そのものに近い安全性を持ちながらも、価格変動が大きめなので中長期志向の投資家向きです。例えば「数年以内に景気後退で金利が下がる」と見れば、今の低いTLT価格で仕込んで将来の値上がりを狙う戦略も考えられます。一方で短期的な利息収入狙いであれば、期間の短い債券ETF(利回り5%前後で価格変動小)の方が適しているでしょう。TLTはあくまで債券投資の入門編の一例ですが、その利回り水準や規模から「米国債ブーム」の象徴的存在と言えます。
  • eMAXIS Slim先進国債券インデックスは、日本の個人投資家に人気のインデックスファンドです。その名の通り先進国の公債(国債や政府機関債)に幅広く投資し、**FTSE世界国債インデックス(除く日本、円換算ベース)**と連動する成果を目指します。わかりやすく言えば、「日本を除く米欧など先進国の債券全体にまとめて投資するファンド」です。
    • 特徴とコスト:このファンドは為替ヘッジは行わないため、債券利息+為替変動がリターンに影響します。信託報酬は年0.154%と非常に低コストで、少額から積立投資もしやすいことから初心者にも利用しやすい商品です。純資産残高も1,600億円超と大きく、投資マネーが集まっています。
    • **パフォーマンス推移:2022年は世界的な金利上昇で基準価額が下落したものの、為替相場(円安)の追い風もあり3年平均リターンは年率+4.9%**と堅調です。直近1年のリターンは+1.65%と小幅ですが、5年平均では年率+4.17%のプラス成長を遂げています。分配金は出さずに自動再投資するタイプのため、長期保有で複利効果を狙える点も魅力です。リスク面では標準偏差(価格変動のブレ)が直近1年で約8.7程度と中程度で、株式よりは低いものの為替要因もあるためゼロではありません。
    • 初心者へのポイント:このファンドはつみたてNISA対応でもあり、長期の資産形成に向いた商品です。例えば毎月コツコツ積み立てれば、先進国債券から得られる利息収入(現在のポートフォリオ利回りは概ね4%前後)と円安時の評価益を中長期で享受できます。一方で円高になれば基準価額が下がる可能性もあるため、為替分散の観点で他の資産クラスと組み合わせると良いでしょう。

5. 投資家心理と市場参加者の傾向変化

上述のような市場環境の変化を受けて、投資家全体のマインドや資金の流れもここ数年で大きくシフトしています。初心者の方にも関係が深いポイントとして、以下のような傾向が挙げられます。

図:先進国債券ファンドへの資金流入額(累積)。2024年(緑線)は年初から一貫して資金が流入し、年末までに過去最高の累計6000億ドル超を記録した。一方、2022年(赤線)は大規模な流出となっていたことと対照的である。
  • 債券ファンドへの資金流入が過去最高に。2024年は「債券の年」とも称され、世界中の投資マネーが債券市場に殺到しました。実際、2024年通年のグローバル債券ファンド流入額は過去最高の6,000億ドル超に達し、債券にとって記録的な人気ぶりとなりました(上図参照)。これは「今のうちに高い利回りを確保しておきたい」という投資家心理の表れであり、裏を返せば将来の景気悪化や株価下落に備える動きとも言えます。2022年には債券ファンドから2,500億ドルもの資金流出が起きていましたが、その潮目が完全に変わった形です。
  • 現金や短期資産にも資金集中。株式でも債券でもない超安全資産(MRFや預金等)にも資金が集まりました。2024年は米国のマネー・マーケット・ファンド(MMF)への流入が1兆ドル超と史上最大規模となり、個人・機関投資家を問わず「高金利のうちに安全に運用したい」というニーズが顕在化しました。初心者の皆さんも、証券会社の預り金やMRFで年5%前後の利息が付くなら、リスクを取って株を買うより魅力的に感じるかもしれません。このように市場参加者全体が守りを固めつつ利回りを追求する姿勢が強まった点は重要です。
  • 株式市場への楽観論と今後の課題。ただし、一方で2024年末時点では株式市場へ資金が戻る動きも見られました。米国株はAIブームや減税期待で年末にかけて上昇し、結果として2024年の株式ファンドも累計6,700億ドル超の資金流入となっています。機関投資家の調査でも、12月時点で米国株への強気姿勢(オーバーウェイト)が過去最高に達したとの報告があります。これは「金利ピークアウト後は再び株式優位に戻る」という見方を反映していますが、債券の利回り優位が続く限り、株式への過度な楽観は禁物でしょう。実際、2025年に向けては新政権の財政政策(大型減税など)がインフレ再燃を招き金利低下が遅れるリスクも指摘されています。投資家にとって大切なのは、状況に応じて柔軟に資産配分を見直すことです。債券と株式のどちらか一方に賭けるのではなく、自分のリスク許容度に応じてバランスを取る姿勢が求められます。

まとめ:コロナ後の上昇相場しか経験していない初心者の方々にとって、昨今の「米国債券ブーム」は少し意外に映るかもしれません。しかし本章で見てきたように、その背景には株式市場の先行き不透明感債券利回りの魅力が確かなデータとともに存在しています。プロの投資家がポートフォリオを債券寄りにシフトさせ、史上最高の資金が債券市場に流入している現在、債券投資はもはや「地味な脇役」ではなく資産運用の主役候補となりつつあります。

初心者の皆さんも、「株価が下がっても債券から利息収入が入る」「株と債券を組み合わせてリスク分散する」といった債券投資のメリットをぜひ押さえてください。次の章以降では、具体的な債券商品の選び方やポートフォリオへの組み込み方、そして債券投資を始める際の注意点などを、さらに詳しく解説していきます。将来の相場変動に動じない安定した資産形成のためにも、債券という選択肢を今こそ学んでいきましょう。


第2章「債券投資とは」につづく

ABOUT ME
いけだい
現在会社員として働きながら、40歳を超えて投資を通じて本格的に資産形成を進めています。このブログでは、**「これから投資を始める人」や「今後の資産形成に漠然と不安を感じている人」**に向けて、実体験を交えた情報を発信しています。
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